145 早く帰って来て助けて!

藤原昭子は目を閉じて感情を落ち着かせ、藤原執事の方を向いて一言一言はっきりと言った。「もう分かったって言ったでしょう。オウム返しみたいに何度も言わないで!」

藤原昭子は、いつか藤原執事に主従関係をはっきりと分からせてやろうと考えていた。

藤原昭子は壁に手をついて階段を上がっていき、藤原執事が付いてこないのを見てほっと胸をなでおろした。

自分の部屋に戻ると、急いで中に入り、すぐに扉を閉めた。体は止めどなく震えていた。

おじいさまは本当に怒っているんだ!

おじいさまがあの島田香織という賤女のために自分に怒りを向けるなんて!

島田香織、絶対に許さないわ!

藤原昭子の瞳に怒りの色が浮かんだが、すぐに消えていった。

おじいさまが祠堂を開くと言い出すなんて、今回はどうすればいいの。

藤原家の祠堂は簡単には開かれない。藤原昭子の記憶では、祠堂が開かれたのは二度だけだった。

一度目は父がAV女優と不倫した時で、父は狂ったように女優を家に迎え入れようとした。

おじいさまはその時怒りで髪が白くなるほどで、父を祠堂に連れて行き、家法を執行した。その後、父は一ヶ月も寝込んでしまった。

二度目は島田香織が義姉の子供を失わせた時で、その時島田香織は祠堂で一晩中土下座させられた。

藤原昭子は震える手でバッグから携帯を取り出し、何度も指を滑らせて、やっと鈴村秀美の番号に辿り着いて発信した。

電話が繋がるとすぐに、藤原昭子は泣きながら叫んだ。「お母さん、早く帰ってきて助けて!おじいさまが私に家法を執行しようとしているの!」

その時、麻雀をしていた鈴村秀美は藤原昭子の泣き声を聞いて、手の牌を落としてしまい、急いで他の人に代打を頼んだ。

鈴村秀美は携帯を持って外に出て、不安そうに尋ねた。「昭子、まず落ち着いて。一体何があったの?どうしておじいさまが家法を執行しようとしているの?」

藤原昭子が事の経緯を簡単に説明しようとした時、外から聞こえてきた足音に心が乱れ、慌てて言った。「お母さん、早く帰ってきて助けて!」

「ツーツー!」

電話から通話終了音が聞こえた。

鈴村秀美は切れた電話を見つめ、顔面蒼白になり、麻雀も放り出して急いで家に向かった。

藤原昭子は電話を切ると、覚悟を決めたような表情で部屋のドアを開けた。