翌日の午後、島田香織は両親と共に裁判所の入り口に現れ、顔面蒼白の高橋邦弘の姿を目にした。
高橋邦弘は藤原昭子の指示を受け、島田香織が愛人関係にあると故意に陥れたのだった。彼はこの裁判に勝てると思っていたが、昨夜の話題のニュースで一睡もできなかった。
島田根治は島田香織の実の父親だった。
裁判官は島田家の戸籍を一目見て、島田香織の勝訴を言い渡した。
こうして、高橋邦弘は裁判に敗れ、巨額の賠償金を支払うことになった。
高橋邦弘が法廷を出る時、すっかり老け込んでいた。彼の名義の全財産を売り払っても、賠償金には足りないのだった。
高橋邦弘は島田香織に許しを請おうとしたが、島田根治の底知れない漆黑の瞳を見て、黙って引き下がった。
その日の夜、島田香織は島田根治と江田景を空港まで見送った。
空港から帰る途中、島田香織は陣内美念から電話を受け、彼女が指定したホテルへ向かった。二人が談笑しながら中に入ろうとした時、陸田健児が出てくるところだった。
陸田健児の隣には美女が立っていた。
島田香織は女性に目を向けた。美女には慣れているはずだったが、この女性の美しさには驚かされた。
しかし、人を見つめ続けるのは失礼だと思い、島田香織は静かに視線を外した。
「島田お嬢様」
陸田健児が呼びかけた。その言葉には明らかな距離感が感じられた。
陣内美念は最初、陸田健児の隣の女性も女優で、ビジネスパートナーだと思っていたが、陸田健児のその呼び方を聞いて瞬時に理解した!
陸田健児はきっとその女性に惚れて、だからその女性の前で島田香織のことを「島田お嬢様」と呼んだのだ。
ふん!クズ男!
追いかけていた時は「香織」と呼び、追わなくなったら「島田お嬢様」か。
陣内美念は自分が目を疑ったと思った。以前は陸田健児が島田香織に相応しいと思っていたのに。思わず嘲笑い、皮肉っぽく言った。「これが陸田スターの彼女なんですね!」
言葉自体に問題はなかったが、その口調には軽蔑が満ちていた。
「美念」島田香織は陣内美念の方を向き、優しく呼びかけた。
「島田お嬢様、初めまして。私は安田暖香と申します。お噂はかねがね伺っておりました」陸田健児の隣に立つ女性が丁寧に挨拶した。
島田香織は落ち着いた様子で手を差し出し、微笑みながら言った。「安田さん」