210 彼女のために妥協する

島田香織は契約書を取り出し、そこに記載された出演料を見て、少し驚いた。誰でもお金は好きだが、藤原航が彼女にこれほどの出演料を提示するのは、本当に適切なのだろうか?

「藤原社長、太っ腹ですね。この出演料は素晴らしいです」島田香織は嬉しそうに言った。

「気に入ってくれて良かった」

島田香織は契約書を見る手を一瞬止め、藤原航を見上げた。目に笑みはなかった。「なぜこの金額なんですか?」

島田香織は藤原航に何か違和感を感じたが、どこが違和感なのかはっきりとは分からなかった。

藤原航は島田香織の目を見つめ、唇の端に薄い笑みを浮かべた。「あなたにはその価値があるからだ」

島田香織は契約書を手に取り、注意深く確認してから言った。「分かりました。奈奈さんに見てもらって、問題なければサインします」