「来たか!」藤原おじいさんは藤原航を招き入れ、手近なリモコンでテレビを消した。
藤原航はベッドの傍まで歩み寄り、無表情で藤原おじいさんを見つめた。藤原執事が出て行き、二人きりになってから、ようやく口を開いた。「何の用でしょうか?」
藤原おじいさんは病院着を着ていたが、とても元気そうな様子で、ベッドから降りて近くのテーブルまで歩き、封筒を取り出して藤原航に渡した。
藤原航は意味が分からず藤原おじいさんを見つめ、封筒を開けると、中には写真が入っていた。
彼はすべての写真をテーブルの上に広げると、陸田健児と島田香織が一緒にお菓子を食べている様子が写っていた。
藤原航は封筒を握る手に力が入り、眉間にしわを寄せた。
傍らに座る藤原おじいさんは藤原航の表情の変化を見逃さず、唇の端に邪悪な笑みを浮かべた。
「おじいさん、島田香織を尾行していたんですか?」藤原航は顔を上げて藤原おじいさんを見た。無表情な藤原おじいさんの顔が目に入った。
「馬鹿を言うな。尾行などしていない。ただ彼女が藤原家のことを調べるのが心配で見張らせていただけだ。それでこんなことが分かってしまった」藤原おじいさんは眉をひそめ、少し困ったように言った。
「それで、どういうおつもりですか?」藤原航は不解そうに藤原おじいさんを見た。
「航よ、陸田健児を見習え。彼がどれだけ積極的か見てみろ。お前は何もしない。そんなことで島田香織を嫁に迎えられるのか?」
藤原おじいさんは諭すように言った。「数日後、私は南区に行って島田家に謝罪し、謝罪動画も出す。ついでにお前の縁談も持ちかけよう」
藤原航は無表情で藤原おじいさんを見つめた。おじいさんの頭がおかしくなったのではないかと思った。
「以前は島田香織の家族が誰なのか分からなかったが、今は分かった。当然、礼儀は尽くさねばならない。藤原家が無作法だと思われてはいけない」
藤原おじいさんは懇々と諭した。「お前も島田香織にプロポーズする機会を逃すな。理由は私が考えておいた。私が重病で、めでたい結婚式で病が治るというわけだ」
藤原航は我慢強く藤原おじいさんの話を聞き終えた。心の中で冷笑したが、表情には出さなかった。
「おじいさん、私は再婚したくありません」藤原航は冷静に言った。
再婚して何になる?
島田香織が虐められるのを待つためか?