271 自分の身を守って

陸田健児と島田香織は車の中に座っており、陸田健児は島田香織がキーホルダーを鍵に付けるのを見ながら、自分のキーホルダーを手に取って言った。「この二つの色、よく似合うね」

「うん、親友同士みたいね」島田香織は笑いながら言った。

陸田健児の笑顔が一瞬止まり、すぐに笑って言った。「男の親友から恋人になったケースも少なくないよ」

島田香織はもう何も言えなくなり、黙って鍵をバッグに戻して言った。「帰りましょう!」

彼女は陸田健児の厚かましさを甘く見ていた。

車を走らせて間もなく、突然「ドン」という音がして車が止まった。島田香織は携帯を見ようとして手から落としてしまい、体が前のめりになった。

幸いシートベルトをしていたし、陸田健児はいつの間にか彼女の肩を押さえていた。

島田香織が陸田健児の方を見ると、彼の先ほどの動作は反射的なものだったようだ。

彼は無意識のうちに自分を守ろうとしたの?

島田香織が何が起きたのか聞こうとした時、陸田健児が「車から降りないで」と言った。

陸田健児はシートベルトを外して車を降り、前の追突した車の方へ歩いていった。

島田香織は前の車の運転手が顔を真っ赤にして、よろよろと歩き、手にはお酒の瓶を持っているのを見た。

前の車の運転手は陸田健児を見るなり押そうとしたが、陸田健児は素早く避けた。

陸田健児は何か訓練を受けているの?

前の車の運転手は陸田健児の回避動作に腹を立てたようで、叫んだ。「目が見えないのか、運転できないなら車に乗るな。賠償金だ、はっきり言っておくが、今日この件は二千万円なければ帰さないぞ!」

その運転手の声は大きく、車の中にいる島田香織にも聞こえた。

前の車の運転手は言い終わると、トランクから鉄パイプを取り出し、手で持ち上げて二、三回振り回した。「さっさと金を出せ!」

島田香織は車の中に座ったまま、追突の原因は分からなかったが、前の車の運転手が棒で脅すのは明らかに間違っていた。

彼女はシートベルトを外し、落ちた携帯を拾い上げ、警察に通報しようとした。

島田香織が通報する前に、前の車からさらに三人の男が降りてきた。

「おい、お前、降りろ、携帯で何してる?降りろ、早く降りろ!」

男の一人が棒を持って島田香織の助手席の窓際に来て、窓を激しく叩きながら大声で叫んだ。