島田香織は葉山蘭子から目を離さず、突然笑いながら言った。「リスクと機会は表裏一体ですね。藤原航はあなたにかなりの利益を与えたのでしょう!」
「島田お嬢様のおっしゃる通りです。私は母親として、今やっと息子のために計画を立てる機会を得ました。もちろん、息子のために最大限の利益を追求しなければなりません」
島田香織はゆっくりとお茶を一口飲み、笑って言った。「葉山さん、母親として息子のことを考えるのは正しいことですが、ただ、あなたがそれを飲み込めるかどうか心配です」
「飲み込めるかどうかは、食べてみないとわかりませんよ」と葉山蘭子は笑いながら答えた。
「ところで、葉山さんは六年前のあの交通事故のことを覚えていらっしゃいますか?」島田香織は微笑みながら葉山蘭子を見つめ、続けて言った。「この件について、藤原の次男はまだ知らないはずです」
葉山蘭子の笑顔が徐々に凍りついていった。
部屋の空気が重苦しくなった。
「葉山さん、もし私があの事件の写真をすべて藤原の次男に渡したら、どうなると思いますか?」島田香織は満面の笑みを浮かべながら、バッグから写真を全部取り出した。
葉山蘭子の優雅な雰囲気はこの瞬間に消え失せ、目には冷たさだけが残った。
島田香織はお菓子を一つ食べ、続けて言った。「葉山さん、どうすべきかおわかりですよね」
その後、島田香織は口を拭い、外へ向かって歩き出した。
個室の入り口に着いたとき、島田香織は振り返って葉山蘭子に尋ねた。「葉山さん、葉山辰夫と藤原新のDNA鑑定はもうされましたか?」
葉山蘭子の顔色が更に青ざめた。
島田香織は個室を出て、自分の車に戻った。
奈奈さんは助手席に座っており、島田香織が戻ってくるのを見て不思議そうに「島田お嬢様、話は終わりましたか?」と尋ねた。
島田香織は微笑んで「うん」と答え、携帯電話を取り出して見始めた。それ以上話したくない様子だった。
島田香織が最も不思議に思ったのは、藤原航が以前からずっと交通事故のことを調査しようとしていたことだった。何年も調べたのに、何も分からなかったはずなのに。
彼女は当初、藤原航が事故の真相を突き止めたら、すぐに黒幕に報復すると思っていた。しかし、藤原航がこんな重大な弱みを彼女に渡すとは予想もしていなかった。
藤原航は一体何をしようとしているのか?