ドアを開けると、陸田健児が外に立っていた。
島田香織の表情が徐々に真剣になり、彼女は陸田健児を見上げ、少し困ったように唇を噛んで言った。「陸田さん、もう遅いので、寝たいんです。」
「一緒に祝日を過ごしに来たんだ。」陸田健児は島田香織に微笑みかけた。
島田香織は陸田健児の顔を見つめ、眉をひそめて言った。「今日は何の祝日なの?」
「感謝祭だよ。」
島田香織は眉をひそめたままだった。
「君を密かに想う機会をくれたことに感謝してるんだ。」陸田健児は優しく言った。
島田香織は唇を噛み、断ろうとした時、陸田健児が右手を上げ、銀のネックレスが彼の手のひらから垂れ下がるのを見た。
島田香織がよく見ると、ペンダントには「香」の文字が刻まれているのが分かった。
彼女は、このネックレスが陸田健児が特別に注文したものだと理解した。
「気に入った?」陸田健児は言いながら、島田香織の前に差し出した。
島田香織は断ろうとしたが、顔を上げると陸田健児の笑みを含んだ切れ長の目と目が合い、胸がときめいた。
「僕が手作りしたんだ。」陸田健児は小さなペンダントを手のひらに載せ、島田香織の前に差し出した。「ほんの気持ちだよ。」
「お水でも飲んでいきませんか。」島田香織は少し体を横に傾け、陸田健児は自然に部屋に入った。
島田香織は陸田健児にお水を注ぎ、彼の前に置きながら、躊躇いがちに言った。「陸田様、もう私のために気を遣わないでください。」
陸田健児は島田香織の前に歩み寄り、少し身を屈めて視線を合わせ、低い声で言った。「11年前、君を助けたのは僕だよ。」
島田香織は信じられない様子で陸田健児を見上げた。
「あの頃、僕は藤原航とまだ仲が良かった。」陸田健児は島田香織の隣に座り、静かに話し始めた。「あの日、僕は藤原航の服を着て、路地を通りかかった時、君が いじめられているのを見て、助けたんだ。」
島田香織は呆然と陸田健児を見つめ、気づかないうちに目が赤くなっていた。
11年前、助けられた後、かすかに見えた制服の名札に「藤原航」という文字があったから、彼女は藤原航に恋をしたのだった。
彼女は長年藤原航を一途に想い続け、彼のために自分の身分を捨てて藤原家に嫁ぎ、そこで散々な目に遭った。ようやく藤原航を愛することをやめようと決心したところだった。