302 眠りについた

島田香織は、こんな風に不思議と彼氏ができてしまい、説明しようとした時には、看護師はもう行ってしまっていた。

島田香織は眉をひそめながら、隣に座っている陸田健児を見て、でたらめを言わないように注意しようとしたが、その美しい桃色の瞳と目が合うと、何を言えばいいのか分からなくなってしまった。

島田香織は仕方なく溜息をつき、患者と言い争っても仕方ないと思い、水筒を取り出して陸田健児に渡した。「まず薬を飲んでください」

陸田健児が薬を飲み終わった後、島田香織はそこに座って考えた。最初は陸田健児の友人に来てもらおうと思ったが、すぐに終わることを考えると、自分で付き添って点滴を終わらせることにした。

普段なら、この時間帯には島田香織は寝ているはずだった。彼女は椅子に寄りかかり、うとうとし始めた。

島田香織は携帯を取り出し、陣内美念とチャットをしようとしたが、数言葉を交わしただけで眠りに落ちてしまった。

陸田健児は横を向いて島田香織を見つめ、彼女が寝ているのを確認すると、そっと彼女の顔の乱れた髪を耳の後ろに掻き上げ、落ちそうになっている携帯を慎重に脇に置いた。

島田香織の頭が傾いていたので、陸田健児は目に笑みを浮かべながら、少し彼女の方に寄り、自分の肩に彼女の頭を乗せた。

陸田健児の動きは非常に慎重で、島田香織を起こさないように気を付けていた。

看護師が巡回に来た時、点滴チューブに血が逆流しているのを見て、点滴を受けているのが島田香織だと思い、彼女を起こそうとしたが、よく見ると点滴を受けているのは陸田健児だった。

看護師が何か言おうとした時、男性が「シーッ」というジェスチャーをして、声を出さないように合図した。

陸田健児は声を抑えて咳払いをし、「看護師さん、針を取り替えていただけますか?静かにお願いします。彼女が疲れているので起こさないでください」と言った。

今年30歳になる看護師は、まだ彼氏がいなかった。まさか真夜中にこんな甘い光景を見ることになるとは思わず、心が締め付けられる思いだったが、それでも小声で「はい、少々お待ちください」と答えた。

看護師はすぐに戻ってきて、陸田健児の針を取り替えた。目は男性の隣で眠る女性に向けられ、マスクをしていても、白い肌と長いまつげが印象的な美しさを感じ取ることができた。