島田香織はそのまま陸田健児に抱き上げられてベッドに座らされた。彼女は陸田健児を押しのけようとしたが、その時には彼はすでに手を離していた。
島田香織は目を上げて陸田健児を見つめた。彼に触れられた場所が火傷しそうなほど熱かった。先ほどの驚きから我に返り、腕時計を陸田健児の前に差し出して、平静を装って言った。「あなたの。」
「ありがとう。」陸田健児は微笑みながら島田香織から腕時計を受け取り、頭を下げて腕時計をはめた。
彼の表情はいつもと変わらず落ち着いていて、まるで先ほど何も起こらなかったかのようだった。
島田香織は陸田健児が意図的に自分を誘惑しているのではないかと思ったが、証拠はなかった。
陸田健児は腕時計をはめ終わると、少し身を屈めて島田香織と目線を合わせ、笑いながら言った。「香織、昨夜は僕を助けてくれて、今日は腕時計も拾ってくれて、本当に僕の身を捧げなくていいの?」