310 便乗する

彼女は藤原航から離れようと決心するたびに、藤原航の優しさに気づかされてしまうのだった。

そのせいで、陸田健児の好意をずっと無視してきた。

さっきの瞬間、彼女は自分の心が乱れていることをはっきりと感じていた。

島田香織は今、自分の感情を整理する時間が必要だと感じていた。

その後しばらくの間、島田香織は陸田健児に会わなかったが、撮影現場に戻ってきた時になってようやく彼に会うことができた。

夜、帰ろうとしていた時、陸田健児が彼女の前に来て、「パーティーに付き合ってもらえませんか?」と尋ねた。

今夜は江田家が主催するパーティーだった。

江田家は多くの招待状を出しており、島田香織も招待状を受け取っていたが、彼女は以前から行くつもりはなかった。

島田香織はまだ自分の感情を整理できていなかったため、「私は…」と口を開いた。

「もうイブニングドレスを用意してありますよ」と陸田健児は笑顔で言った。

島田香織は陸田健児の黒い瞳に輝く光を見つめ、一瞬彼の要求を断ることを忘れ、まるで魔が差したかのように承諾してしまった。

陸田健児は今日白いスーツを着ることにしており、島田香織には白いドレスを用意していた。二人が並ぶと、才色兼備で非常に相性が良かった。

傍らで島田香織と陸田健児のスタイリングを手伝っていた人が、思わず感嘆して言った。「陸田若様、島田お嬢様、お二人はまるでお揃いの服を着ているようですね」

島田香織は鏡に映る自分と陸田健児の姿を見つめながら、記憶の断片が頭をよぎった。

かつて彼女は白いウェディングドレスを着て、白いスーツを着た男性の隣に立っていた。彼女は微笑みながら男性に何かを言っているようで、記憶の中のその男性はとても優しく話していたようだが、その男性の顔も、言葉も、はっきりとは思い出せなかった。

ただ唯一確かなのは、その時の彼女がとても幸せだったということだった。

島田香織が物思いに耽っている時、陸田健児が彼女の傍らに来た。

「何を考えているの?そんなに夢中で」と陸田健児は優しく尋ねた。

島田香織は陸田健児を見て微笑み、「このドレスがとても素敵だなって思っただけです」と答えた。

「では、お嬢様に少し甘えてもいいですか?」

……

島田香織は車の中に座り、陸田健児が彼女の隣に座っていた。

「では、お嬢様に少し甘えてもいいですか?」