312 心の痛み

島田香織は陸田健児と一緒に宴会場に入ると、周りの人々の視線を感じ、彼らの噂話も微かに聞こえてきた。

陸田健児は島田香織の耳元に近づき、小声で言った。「みんな、僕たちがとても似合っていると思っているよ。」

島田香織は前方をまっすぐ見つめ、陸田健児とそんな話をする気も起きなかった。

陸田健児は島田香織を連れて江田純の方へ向かった。江田純はこの宴会の主役だった。

「江田若様、お久しぶりです。」

「江田若様、お元気でしたか?」

陸田健児と島田香織は続けて江田純に挨拶をした。

江田純は藤原航と仲が良く、陸田健児と島田香織が手を繋いでいるのを見て、笑顔が少し固くなった。

「陸田若様。」江田純は陸田健児に簡単に挨拶を返し、最後に島田香織の顔に視線を向けた。「島田お嬢様、お久しぶりです。」