336 個人的協力

藤原航は一人で憂さ晴らしに酒を飲んでいると、突然一人の男が近づいてきて、彼の隣に座った。「はじめまして、小山然と申します。藤原の次男、お噂はかねがね伺っておりました」

彼は以前から小山家の名を聞いていたが、藤原家と小山家には取引関係がなかった。彼は小山然の顔を見つめ、「用件は?」と尋ねた。

小山然は藤原航の冷たい態度を全く気にしていないようで、金縁眼鏡を直しながら、「藤原の次男と協力関係について話し合いたいことがあります」と言った。

「ビジネスの話なら、私の秘書に相談してください」と藤原航は冷たく答えた。

「個人的な協力関係の話です」と小山然は付け加えた。

藤原航はそれを聞いて、グラスを手に取り一口飲んでから置いた。彼は名家同士の権力争いには全く興味がなかった。

小山家の事情なら、少し調べれば分かることだった。自分の家の面倒な問題にも関わりたくないのに、どうして小山家の問題に関わる必要があるだろうか?

「小山若様は人違いをしているようですね。私は個人的な協力関係には興味がありません」と藤原航は無表情で言い、先ほどまで赤く染まっていた瞳は通常の色に戻っていた。

小山然は目を細め、薄いレンズの奥の黒い瞳に冷たい色が宿った。「藤原の次男が小山家の事に興味がないのは分かっています。しかし、島田お嬢様のことには興味がありませんか?」

藤原航は立ち去ろうとしていたが、その言葉を聞いて立ち止まり、小山然の顔を見つめた。

「藤原の次男の島田お嬢様への一途な想いについて、私から見れば島田お嬢様はあなたに対して少し冷たすぎるように思えます」と小山然は淡々と言った。

藤原航の瞳は少しも変化を見せず、小山然を見つめながら冷たく尋ねた。「結局何がしたいんだ?」

「一つの取引を藤原の次男と話し合いたいのです。もしこれが成功すれば、藤原の次男は島田お嬢様と再婚できる。そして私は小山家の当主の座に就ける。藤原の次男、いかがでしょうか?」と小山然は笑いながら藤原航を見た。

藤原航は静かに小山然を見つめていたが、突然笑い出した。「私をそんなに簡単に騙せると思っているのか?私と島田香織のことは、どう考えても小山家とは関係ないはずだ。そんな時間があるなら、小山家の他の人々への対処を考えた方がいい。私に来る必要はない」