350 追い出し令

「午後の検査で、頭に問題がなければ、明日退院できます」藤原航は島田香織のベッドの横に座り、まだ少し現実感がないような気がしていた。

「うん」香織は静かな目で航を見つめながら答えた。「もう大分良くなったから、付き添わなくていいわ」

「今は忙しくないから」航は寂しげな笑みを浮かべた。香織が自分を受け入れてくれる日がいつになるのか分からないからだった。

香織は横を向いて、航との会話を避けた。数日前まで航と楽しく話していた自分が不思議でならなかった。あまりにも奇妙すぎる!

「今回は命を救ってくれてありがとう。でも、距離を置いた方がいいわ。メディアに知られたら、また変な記事を書かれるから」香織は最初、航に自主的に去ってもらおうと思っていたが、航にその気配が全くないので、はっきりと言うしかなかった。