352 憂鬱

陣内美念は島田香織に藤原航のところへ見舞いに行くよう勧めようと思ったが、島田香織が新しいゲームを始めるのを見て、軽くため息をつき、何も言わなかった。

林楠見は島田香織のアパートを出て、建物の下に立ち、島田香織の部屋の窓を見上げた。最後に諦めたようにため息をつき、車で藤原航のアパートへ戻った。

藤原航がいつ起きたのかは分からないが、今はパジャマ姿でソファに寄りかかって座っており、顔色は青ざめていた。

林楠見は買ってきた食事をテーブルに置き、島田香織のところへ行ったことは言えず、「社長、少し食事を取って、解熱剤も飲んでください。すぐに良くなりますよ」と言った。

藤原航は林楠見の声を聞くと、手に持っていたタブレットから視線を林楠見の顔に移し、最後にテーブルの食事に目を落とした。何かを思い出したのか、寂しげな表情を浮かべた。