356 浮気?

「島田お嬢様、先に申し上げておきたいことがあります」シンバはすぐにカードを引かず、島田香織から目を離さずに言った。「契約書にサインしていただきたいのですが、後で約束を反故にされては困りますし、お互いの時間の無駄になってしまいますから」

そう言うと、誰かが島田香織の前に契約書を差し出した。

島田香織と藤原航は素早く目を通し、お互いに顔を見合わせた。二人ともシンバが罠を仕掛けていることを完全に理解した。

島田香織はシンバを見つめ、口角を上げながら微笑んだ。「シンバさんがこれほど私を評価してくださり、協力したいとおっしゃるなんて、思いもよりませんでした」

「島田お嬢様が私の作品に出演してくださるなら、この上ない光栄です」シンバは笑みを浮かべながら島田香織を見つめた。

島田香織はシンバの言葉には応えず、カードに視線を落として言った。「もう遅い時間ですので、早く始めましょうか」

そう言うと、島田香織はカードを広げ、一枚を引いて即座にめくった。「ジョーカーが出るなんて、天は私に味方してくれているようですね。シンバさん、どうぞ」

シンバは顔色を変え、眉をひそめながら島田香織を見つめ、適当に一枚を選んで見もせずにめくった。「やはり天は美人に味方するものですね。島田お嬢様の勝ちです」

シンバの手にはスペードの4があった。

島田香織は笑顔でシンバを見て言った。「シンバさん、お先にどうぞ」

シンバはカードから一枚を引き、めくって見ると笑いながら言った。「スペードの10です。今度は天が私の味方をしてくれるでしょうか」

島田香織は笑みを浮かべながら手をカードの上に移動させ、長い指で各カードの上を滑らせ、最後にシンバの緊張した視線の中で一枚を引き、めくった。「スペードのエース」

島田香織は花のように微笑んで、「シンバさん、ご配慮ありがとうございます」と言った。

シンバは島田香織の手のカードを見つめ、口角を震わせながら、しばらくして言った。「島田お嬢様は本当に幸運の女神に愛されているようですね。では、今夜の件は帳消しにしましょう」

シンバはそう言うと、手下たちに目配せをし、一同はその場を去った。

島田香織はそれを見て、少し安堵の息を吐き、陣内美念の前まで歩み寄った。

陣内美念の腕の中にいた男は立ち上がり、陣内美念を押しのけて立ち去った。