第387話 狙われた

橋本月見は心の中でプレッシャーを感じながら、慌てて笑顔で言った。「もちろんです、島田お嬢様、お気をつけて!」

島田香織は意味深な視線を戻し、藤原航と一緒に立ち去った。

橋本月見は島田香織と隣の男性が楽しそうに話しながら去っていくのを見て、顔には驚きが浮かんでいた。

先ほど転んだ女性は中島夏美といい、中島夏美の視線は島田香織の隣にいる男性に釘付けになっていた。その後、橋本月見に向かって笑いながら尋ねた。「島田お嬢様って誰?そうそう、島田お嬢様の隣にいる男性のことは知ってる?」

中島夏美は今年帰国したばかりで、以前はずっと海外で暮らしていたため、国内の事情はよく分からなかった。

橋本月見は視線を戻し、中島夏美の質問を聞いて、続けて言った。「島田香織は島田グループの島田根治と江田景の娘よ。」

中島夏美は帰国前から島田家のことは知っていたが、帰国してすぐに島田香織に会うとは思っていなかった。

「藤原航は、以前藤原グループの社長だった人よ。」橋本月見は真剣な表情で言った。

「以前?」中島夏美は驚いて橋本月見を見た。彼女も藤原家のことは知っていたが、橋本月見の言葉に違和感を覚えた。

「先月、藤原航が藤原家の息子ではないことが暴露されて、藤原家は今、行方不明だった本当の息子を見つけたの。」橋本月見は簡単に説明した。

中島夏美は明るい笑顔を浮かべて言った。「藤原航はなかなかいい感じね。そうそう、確か二人は結婚してたんじゃない?」

「そう、一年前に離婚したわ。」

「今は付き合ってるの?」中島夏美は眉を少し上げて尋ねた。

「いいえ、島田香織が藤原航をスターキングエンタテインメント株式会社に雇ったみたい。」

中島夏美は何も言わず、ただ藤原航の去っていく後ろ姿を見つめて笑っていた。

橋本月見は中島夏美のその様子を見て、彼女が藤原航に興味を持っていることは分かったが、なぜ藤原航を気に入ったのかは理解できなかった。

しかし橋本月見はそれ以上考えなかった。橋本家には中島家と締結したい契約があったため、彼女は中島夏美に一生懸命取り入ろうとしていたのだ。

彼女は黙って目を伏せ、何も知らないふりをした。