399 こんなに優しいの?

島田香織は胸が痛み、軽くため息をつきながら言った。「私の代わりに陸田健児にお礼を言ってください!」

「はい」奈奈さんは返事をして、外へ向かって歩き出した。

オフィスには島田香織一人だけが残された。彼女は保温容器を見つめ、飲もうとした時、手が容器に触れた瞬間、なぜか陸田健児の家で鍋を食べた時に聞いた怖い話を思い出し、さらに陸田健児の暗く不気味な瞳を思い出すと、思わず身震いした。

島田香織は企画書を手に取り、ソファーに横たわって読み始めた。

読んでいるうちに、いつの間にか眠りに落ちてしまった。

どれくらい時間が経ったのか、ノックの音が聞こえ、彼女はぼんやりと顔の上に乗せていた企画書を脇に置き、眠そうな目で起き上がって「どうぞ」と言った。

今回入ってきたのは奈奈さんではなく、藤原航だった。