409 また計略にかかる

部屋のドアが少し開いていて、彼は押して入ったが、誰も見当たらなかった。

そのとき、背後のドアが外から閉められた。

藤原航は振り返って見て、眉をひそめながら中へ進んでいった。

ホテルの部屋は夜灯だけがついており、黄色みがかった光が部屋全体をより温かみのある雰囲気にしていた。

突然、バスルームから水の音が聞こえてきた。

藤原航は眉をひそめながら、田中安尾に電話をかけようと携帯を取り出したが、電波が入っていないことに気づいた。

おかしい。

藤原航が困惑していると、突然バスタオルを巻いた中島夏美が、髪を濡らしたままバスルームから出てきた。

中島夏美は藤原航を見ても少しも驚いた様子もなく、明るい笑顔を見せて、優しく声をかけた。「藤原さん、来てくださったのね!」

藤原航は冷たい目で中島夏美を見つめ、その鋭い目には苛立ちが満ちており、暗い表情で尋ねた。「田中安尾はどこだ?」