鈴木グループは藤原航によって極めて安い価格で買収されたが、まだ多くの手続きが残っており、年が明ける前に藤原航は安川市に戻ることになった。
島田香織は普段家にいることはなく、島田根治と江田景の二人は島田香織がこんなに早く帰ることを望んでいなかったため、もう少し家に滞在するよう頼んだ。
そのため、正月四日目は藤原航一人だけが空港に向かった。
間もなく、車は空港の入り口に停車した。
南区ではもう雪は降っていなかったが、今日は太陽が出ていたため、雪が解け始めていた。
雪解けは雪が降っているときよりもずっと寒かった。
島田香織は元々厚着をしていなかったが、後に藤原航の強い要望で帽子と手袋をつけることになった。
車内は暖房が効いており、島田香織は全身ポカポカで、顔が少し赤くなっていた。
島田香織は車を止め、少し窓を下げると、冷たい空気が一気に入ってきて、顔の熱が少し引いた。助手席に座る藤原航の方を向いて、「着いたわ」と言った。
「いつ帰ってくる?」藤原航はそう言いながら島田香織を見つめ続け、その目には名残惜しさが浮かんでいた。そして手早くシートベルトを外した。
島田香織は少し考え込んでから、「それは両親がいつ私を行かせてくれるかによるわね」と答えた。
藤原航は島田香織がわざとそう言っているのを知っていたが、それでも身を乗り出して、島田香織の唇にしっかりとキスをし、離れる直前に意地悪く軽く噛んだ。
ほんの数秒で、力は強くなかったが、島田香織は唇がしびれたような感覚があり、顔が少し赤くなって急いで促した。「早く降りて中に入って。家に着いたら電話してね。」
藤原航は島田香織の顔に視線を落とし、あの日彼女を抱きしめた素晴らしい出来事を思い出し、急に喉が渇いた感じがして、「香織」と呼びかけた。
「うん?」島田香織は不思議そうに藤原航を見て、首を傾げた。
「早く帰ってきて、同棲のことについて相談しよう」藤原航は島田香織の真っ赤な顔を見て、口角を少し上げ、その後島田香織の帽子を整えて、「電話するのを忘れないでね」と言った。
「わかった」
助手席のドアが開いた瞬間、骨まで染みる寒さが一気に入ってきて、島田香織は厚着をしていて良かったと少し安心した。そうでなければ凍えてしまっていたかもしれない。