島田根治は料理を作る動作を少し止め、不満そうな表情で言った。「来年?」
藤原航は冷菜を調理しながら、真剣な表情で言った。「おじさん、ご安心ください。香織が今のように何の心配もなく過ごせるなら、それでいいんです。私は彼女のことを5年以上好きで、この年月ずっと変わることはありませんでした。私たちはまず婚約して、おっしゃる通り来年結婚するのもいいと思います。そうすれば、外部からも私たちのことを過度に注目されることもないでしょう。」
島田根治は表情を少し止め、認めざるを得なかった。藤原航の言葉は実に素晴らしかった。
藤原航の言葉には二つの意味が込められていた。一つは島田香織への愛情と結婚したい気持ちを表現し、もう一つは島田のお父さんとお母さんの意見を尊重するということだった。
島田根治は藤原航を見直した感があったが、以前藤原航が島田香織を救うために苦心したことを考えると、島田香織を彼に託してもいいと感じた。
ただし……
島田根治は少し後悔した。知っていれば「再来年」と言えばよかった。
リビングで。
江田景はキッチンで手伝う藤原航を見ながら、島田香織の側に寄って、小声で尋ねた。「彼はあなたに優しい?」
島田香織は頷いた。
「じゃあ、藤原家にいた時は……」江田景は心配そうに尋ねた。
「藤原航が調べたところ、竜組の人が私の命を狙っていたそうです。後に現れた竜組は私が幸せになるのを見たくなかったみたいで、だから彼は表面上私に冷たくしていたんです。」島田香織は丁寧に説明した。
「じゃあ、今の彼の態度も演技じゃないって、どうして確信できるの?」江田景は尋ねた。
島田香織は少し考えて、首を振って言った。「お母さん、あなたの心配はわかります。でも彼は何度も私のために危険な目に遭い、銃で撃たれた傷もあります。それも私を救うためでした。」
江田景はスーツケースの中身に目を向けて、静かに言った。「あれらを見ていると、彼もあなたのことを大切に思っているのがわかるわ。」
夕食時、テーブルの雰囲気は和やかだった。
江田景は藤原航が今年の婚約と来年の結婚に躊躇なく同意したことを知り、感慨深げに言った。「藤原君、あなたは本当にいい子ね。私たち夫婦もあなたのことが好きよ。もちろん、一番大事なのは香織があなたのことを好きだということね。」