しらゆりマンションに戻ったのは、すでに夜の9時だった。
その時、飲んだお酒を吐き出したものの、避けられないことに一部は吐ききれなかった。
今、体の中で火が走り回っているような感覚があった。
エアコンを最大に冷やしても、ベッドに横になっても寝返りを打つばかりで眠れなかった。
それどころか、時間が経つにつれて、体はますます熱く渇いていった。
工藤みやびは起き上がり、浴槽いっぱいに冷水を張り、冷蔵庫から氷も全部入れた。
全身を刺すような冷水に浸かると、不快な熱さがようやく少しずつ冷えていった。
以前は、どんな困難に遭っても、どんな危険に直面しても。
彼女は工藤司が必ず自分を見つけ出し、必ず守ってくれると信じていた。
でも今は、彼は彼女を探しに来ることはない。
今、彼が守っているのは堀夏縁、彼女を殺し、彼女の心臓を奪って生き延びた女だ。
工藤家のお嬢様という身分を失い、もう誰も彼女が辛い思いをしているかどうか気にかけず、誰も彼女の生死を気にかけることはない……
彼女は膝を抱えて冷水の浴槽に座り、リビングの電話が何度も鳴っていることにまったく気づいていなかった。
……
藤崎グループ。
藤崎雪哉は退社する前に、書類をしらゆりマンションに置き忘れたことを思い出した。
明日の朝会で必要だったため、マンションに電話をかけ、荒木雅にそれを見つけてもらおうとした。
岡崎謙が明朝取りに行き、直接会社に持ってくるようにするためだ。
しかし、電話は鳴り続けたが、誰も出なかった。
何度も電話をかけても誰も出ないので、藤崎雪哉はしらゆりマンションまで車で行くことにした。
マンションのドアを開けると、迎えてきた冷気に眉をひそめた。部屋全体が氷室のように冷えていた。
彼はエアコンを切り、書斎に行って書類を見つけた。
帰る前に、工藤みやびの部屋のドアが開いているのを見て、覗いてみた。
しかし、部屋には誰もいなかった。
「荒木雅?」
電気もついていて、エアコンも動いているのに、人がいない?
彼は一通り探し回り、最後に洗面所の外でドアをノックした。
「荒木雅?」
何度かノックしたが、中から返事はなかった。
しかし、ドアは内側から鍵がかかっていた。
彼は書類を置き、書斎に行って予備の鍵を見つけ、洗面所のドアを開けた。