第22章 堀夏縁の心臓移植成功

「誰が朝っぱらから風呂に入るんだよ？」工藤みやびは怒って言い返した。

「兄貴はいつも出かける前に朝シャワーを浴びるだろ、お前も見に行ったことあるじゃん？」藤崎千颯はにやりと笑った。

「……」工藤みやびは言葉に詰まった。

荒木雅は確かに藤崎雪哉の入浴を覗きに行ったことがあったので、今回は故意ではないと言い訳できなかった。

ドアベルが鳴り、藤崎千颯がドアを開けると、岡崎謙が服と朝食を持ってきていた。

藤崎千颯は岡崎謙の肩に手を置き、工藤みやびを指さした。

「謙、当ててみろよ、彼女は誰だと思う？」

岡崎謙はバカを見るような目で彼を一瞥し、工藤みやびに向かって頷いて挨拶した。

「荒木さん、お久しぶりです。」

「マジかよ、俺は気づかなかったのに、どうやって分かったんだ？」藤崎千颯は不満そうに言った。

岡崎謙は彼に答えず、直接藤崎雪哉に服を届けに行った。

そして、ついでに彼女のスリッパを拾ってきてくれた。

しばらくして、藤崎雪哉が部屋から出てきた。

オーダーメイドの青いビジネススーツに身を包み、シルバーグレーのネクタイを完璧に結び、シャツのカフスは豪華で精巧で、頭からつま先まで禁欲的な色気を漂わせていた。

彼は岡崎謙をちらりと見て、「物は持ってきたか？」と尋ねた。

岡崎謙はすぐにスーツのポケットからカードを取り出し、彼に渡した。

「服部さんに確認したところ、その半分の棋譜は現在30万円の価値があるので、30万円を入金しました。」

藤崎雪哉はそれを受け取り、彼女の前に置いた。

「これは棋譜の価値が上がった後の価格だ。お前の報酬だ。」

工藤みやびはカードを受け取り、誠実な表情で言った。

「ありがとう、それと……さっきのは本当に故意じゃなかったの、本当に！」

彼女は目が覚めたとき、昨夜彼と藤崎千颯も泊まっていたことを忘れていたのだ。

「分かった。」藤崎雪哉は平然と答えた。

「分かったよ、わざと覗いたわけじゃないんだろ、いいだろ。」

藤崎千颯は蒸し餃子を一つ食べながら、テレビをつけて朝のニュースを見ようとした。

「……」工藤みやびはむかついてしょうがなかった。

この二人の表情を見ると、彼女の言葉を全く信じていないようだった。