工藤みやびはカップを持つ手を震わせ、藤崎雪哉の足音が近づいてくるのを聞きながら、動かずにそこに座っていた。まるで石になったかのようだった。
鈴木紀子と西村千晴は手に持っていたお菓子を置き、立ち上がって藤崎雪哉に丁寧に言った。
「藤崎おじさん、雅に会いに来ました。お邪魔しています」
藤崎雪哉の表情はさらに暗くなり、そこに座っている心虚な少女を見て、意地悪く口角を上げた。
「君がいつから私を敬い愛するようになったのか、気づかなかったよ」
工藤みやびは乾いた笑いを浮かべた。「心の中であなたを敬い愛しています、藤崎おじさん」
彼女より10歳年上なのだから、藤崎おじさんと呼ぶのは間違っていないはずだ。
藤崎千颯は笑いを堪え、苦しそうだった。
藤崎雪哉が入ってきた瞬間から、西村千晴と鈴木紀子はリビングの雰囲気が重くなったのを感じ、座っていても食べ物にも手をつけられず、話すこともできなくなった。