桜景園、竹内家。
中山美琴はお風呂から上がり、携帯を手に持って出てきた。携帯を見ても着信はなく、顔には少し焦りの色が見えた。
本を読んでいた竹内家成はちらりと見て、「最近、その携帯から離れないね。そんなに忙しいの?」と言った。
最近は食事中もお風呂の時も携帯を持ち歩いていた。以前はこんなことなかったのに。
中山美琴の口元の笑みが少し固くなった。「企画部の重要な計画書を待っているの。遅らせるわけにはいかないから」
時間から計算すると、山本社長が手配した人たちは今頃仕事を終えているはずなのに、なぜまだ連絡の電話がないのだろう。
前回のホテルでの一件以来、彼女は毎日気が気ではなく、一晩中ぐっすり眠れた日は一日もなかった。
山本社長に電話して状況を確認しようかと迷っていたその時、携帯が突然震えた。慌てて見ると、顔色が一瞬で変わった。