第88章 彼の兄がこんなに……情趣に富んでいるなんて

しばらくして、藤崎雪哉はようやくトイレから出てきた。

藤崎千颯は彼を見るなり、すぐに両手を挙げて降参のポーズをとった。

「約束するよ、さっきは何も見てなかったよ。君が遮っていたから、何も見えなかったんだ。」

彼がどうして知っているのか、二人はドアを閉めずに、洗面所でキスし合っていたのだ。

それも洗面台という奇妙な場所で。まるでロボットのように無趣味な兄が、性生活においてこんなに...情熱的だとは思わなかった。

藤崎雪哉は彼を無視し、水を一口飲んで、喉の渇きを少し和らげた。

藤崎千颯は急いでダイニングに走り、自分が買ってきた夕食を一つ一つテーブルに並べ、兄に手柄を自慢した。

「ほら、二人とも夕食を食べていないと思って、わざわざ食べ物を買ってきたんだ。」

藤崎雪哉は電話を受けた後、工藤みやびの部屋のドアをノックした。

「みやび、出ておいで。食事だよ。」

「お腹すいてないから、食べない。」

部屋から少女のむっつりした声が聞こえ、明らかにさっきのことでまだ怒っていた。

自分はもう少しで食べられるところだったのに、何が食事だ。

藤崎雪哉はもう一度ノックして、注意を促した。「食事をしてから、薬を飲むんだ。」

工藤みやびは手の傷を見て、仕方なく溜息をつき、ドアを開けて素直にダイニングへ行って一緒に食事をした。

座るなり、藤崎千颯はおべっかを使って彼女にスペアリブを取り分け、にこにこしながら言った。

「今度二人が何かしたいときは、前もって合図してくれれば、邪魔しないように遠くに行くから...」

工藤みやびは冷たい視線を投げかけた。誰が何かするって?

しかし藤崎雪哉は言った。「これからは、用もないのに来ないでくれ。」

藤崎千颯は何度もうなずいた。「わかったよ、藤崎の三の若様にも来ないように警告しておくよ。」

これからここは二人の愛の巣なのだから、彼らが電灯の邪魔者として来るのは気が利かない。

工藤みやびは泣きたい気持ちを抑え、これからの日々がますます生きづらくなると深く感じた。

藤崎千颯は工場で見た惨状を思い出し、好奇心から尋ねた。「荒木雅、どうやって十三人の屈強な男たちをボコボコにしたの?」

工藤みやびは唇を引き締め、少し考えてから適当に答えた。