第116章 役を奪われそう?

工藤みやびは優雅に微笑み、手を伸ばして総監督の安藤泰と握手した。

「ありがとうございます」

制作監督は撮影されたオーディション映像を二度見て、さっき彼女を整形ネット有名人と言ったキャスティング監督に尋ねた。

「鈴木さん、この荒木雅というネット有名人は演技力がないって言ってなかったか?」

「武術指導もないのに、こんなに見事にアクションシーンをこなし、感情表現も非常に説得力がある。これを演技力がないと言うのか?」

「私は...」

キャスティング監督は言葉に詰まった。荒木雅のオーディション演技は完璧で非の打ちどころがなかった。彼に何が言えるだろうか。

「この役は、彼女以外にいない」と制作監督は笑顔で言った。

キャスティング監督は先ほど北川秋と契約することを約束したことを思い出し、「まあまあですが、結局は新人で、知名度は北川秋にはかなわないでしょう?」

「良い素質を持っている。新人でも構わない」制作監督は工藤みやびの演技力を高く評価していた。

ここ数日、女性主役の人選に満足できず、安藤はもう撮影を辞めると騒いでいた。

今、撮りたかった小倉穂役を見つけたので、もう騒がないだろう。

総監督の安藤泰と制作監督が工藤みやびと石橋林人と話している時、清楚な雰囲気の若い男性がアシスタントを連れて入ってきた。

「安藤さん、土屋監督、木村監督、みなさんいらっしゃいましたか」

「佐藤臣か、ちょうど良かった」安藤は工藤みやびを指さして言った。「こちらが小倉穂を演じる荒木雅さんだ。すぐに一緒に仕事をすることになるから、先に知り合っておくといい」

荒木雅は丁寧に手を差し出し、「はじめまして、荒木雅です」

佐藤臣はちらりと見ただけで、彼女と握手せず、むしろこう言った。

「安藤先生、小倉穂役は...北川秋に決まったんじゃないですか?」

安藤は顔を引き締めた。「誰が言った?」

「私と北川秋は同じ事務所です。彼女はさっき電話で、もうすぐ契約すると言っていました。マネージャーはすでにスケジュールを調整しているそうです」と佐藤臣は言った。

「オーディションはたった今終わったばかりだ。誰が彼女に決まったと言った?」総監督の安藤泰はキャスティング監督を見た。さっき彼が人を送り出したのだ。