第116章 役を奪われそう?

工藤みやびは優雅に微笑み、手を伸ばして総監督の安藤泰と握手した。

「ありがとうございます」

制作監督は撮影されたオーディション映像を二度見て、さっき彼女を整形ネット有名人と言ったキャスティング監督に尋ねた。

「鈴木さん、この荒木雅というネット有名人は演技力がないって言ってなかったか?」

「武術指導もないのに、こんなに見事にアクションシーンをこなし、感情表現も非常に説得力がある。これを演技力がないと言うのか?」

「私は...」

キャスティング監督は言葉に詰まった。荒木雅のオーディション演技は完璧で非の打ちどころがなかった。彼に何が言えるだろうか。

「この役は、彼女以外にいない」と制作監督は笑顔で言った。

キャスティング監督は先ほど北川秋と契約することを約束したことを思い出し、「まあまあですが、結局は新人で、知名度は北川秋にはかなわないでしょう?」