第153章 こんな人は藤崎家の門をくぐれない

丸山みやこは、ドアを開けたらそこに隠れている女性が見えると思っていた。

しかし、中には誰もいなかった。

だが、部屋のベッドと寝具は明らかに女性らしい雰囲気で、テーブルの上には女性のスキンケア用品や化粧品が置かれていた。

あの忌々しい女、ここに住んでいるのか？

「何をしているんだ？」

藤崎雪哉は冷たい目で丸山みやこを見つめ、声は厳しく威圧的だった。

「私は...トイレだと思って...」

丸山みやこは恐怖で少し震え、もう一度中に入って探したかったが、藤崎雪哉の前であまりにも露骨な行動はできず、ドアを閉めて諦めるしかなかった。

聡明な藤崎雪哉は、もちろん母親と丸山みやこの策略を見抜いていた。

不機嫌そうに眉を下げ、手元の書類をめくりながら冷たい口調で言った。

「他に用がなければ、そろそろ帰るべきだ。私はまだやることがたくさんある」

藤崎奥様は息子の怒りを買ったことを悟った。自分の息子とはいえ、本気で怒ると情けをかけてくれないことを知っていた。

そこで、丸山みやこを一瞥し、優しい声で言った。

「では、私たちは先に帰るわ。時間ができたら実家に食事に来てね。もう二ヶ月近く帰ってきていないわ」

「ああ」藤崎雪哉は冷淡に返事をした。

藤崎奥様と丸山みやこは、その人がマンションにいると疑っていたが、藤崎雪哉がいる以上、強引に家を捜索することもできなかった。

マンションを出ると、藤崎奥様は尋ねた。

「さっきの部屋から確かに音がしたわ。ドアを開けても誰も見なかったの？」

丸山みやこは首を振った。「部屋には誰もいませんでした。でも...」

「でも何？」藤崎奥様は追及した。

丸山みやこは失望の表情で藤崎奥様を見た。「あの部屋には女性の物があります。あの女の子は...藤崎社長と同棲しているようです」

藤崎奥様はそれを聞いて、さらに表情を曇らせた。

「知り合ってどれだけの時間なのに、もう一緒に住んでいるなんて。やはり家柄のいい娘じゃないわ」

彼女には理解できなかった。息子がどうして生まれも良く、教養もある丸山みやこを選ばず、軽薄な女性に目を向けるのか。

丸山みやこは悔しそうにため息をついた。「でも、藤崎社長が好きなのは...」

以前は荒木雅が厚かましく彼に近づき、今度は別の女性が彼に近づいている。