二人が再びリビングに戻ると、工藤みやびはもう台本を読み込む気分ではなくなっていた。
藤崎雪哉も一時的に手元の仕事を置き、表情はやや重々しかった。
「他人があなたを好きかどうかは重要じゃない、私があなたを好きなら十分だ」
工藤みやびは呆れた顔で、「あなたのお母さんも他人なの?」
藤崎雪哉は説明しなかった。彼が彼女と結婚すると決めたなら、誰が反対しても止められないのだから。
工藤みやびは取り入るように笑って、親切に提案した。
「藤崎社長、あなたのお母さんが一番好きなのは丸山みやこでしょう。丸山さんは出身も家柄も良くて、あなたにぴったりです」
「それで?」藤崎雪哉の声は少し冷たくなった。
「だから彼女が藤崎夫人になるのが一番適しているわ。あなたのご両親も気に入っているし...」工藤みやびはにこにこと言った。