部屋の中で、藤崎千明はバスローブを身にまとってベッドに座っていた。
片手で殴られて顔が腫れ上がった村上社長を指さしながら、駆けつけてきた総監督と制作監督に訴えた。
「あなたたちは私を映画に出演させるために誠意を持って招いたと言いましたが、この映画はまだ撮影も始まっていないのに、このスケベ爺さんが私の部屋に入ってきて……」
安藤先生は口角を引きつらせた。明らかに彼自身が進んで来て、すでに決まっていた主役を奪ったというのに?
「私は…私はあなたの部屋に入るつもりじゃなかった」村上社長は顔が腫れていて、言葉もはっきりしなかった。
荒木雅というあの生意気な女が場所を変えようと言って、彼を引っ張ってこの部屋に入れたのだ。彼がどうして部屋の中に藤崎の三の若様がいることを知っていただろうか。
「私の部屋に入るつもりじゃなかった?」藤崎千明は彼がまだ口答えするのを見て、すぐに怒りが増した。「お前は俺の胸を触っておいて、まだ部屋に入るつもりじゃなかったと言うのか?」
そう言いながら、また殴りかかろうとした。
村上社長は身をすくめた。片手は殴られて骨折し、全身が痛くて死にそうなのに、彼らはまだ彼を解放してくれなかった。
藤崎千明は自分で彼をボコボコにしただけでなく、自分が疲れると、マネージャーとアシスタントを呼んで彼を殴らせた。
この一晩、彼は生きた心地がせず、痛みで気を失っても一杯の冷水をかけられて目を覚まされた。
「……」マネージャーの宮本明人は頭を抱えた。彼は言葉遣いに気をつけられないのだろうか。
お前は大の男なのに、自分の胸を触られたと言って、こんなに激怒するなんて、お前の男らしいイメージはどうするつもりだ?
それに、相手はただ一度触っただけだ。
お前は相手を殴り、さらに私と二人のアシスタントを呼んで一晩中暴行を加えた。
正直言って、彼が藤崎姓でなければ、こんな風に芸能界で振る舞っていたら、とっくに八百回は殺されているだろう。
しばらくして、竹内薫乃はようやく我に返り、ぎこちなく笑いながら尋ねた。
「村上社長はどうして……」
彼は荒木雅を探しに行ったのではなかったのか?
どうして藤崎千明に会いに行って、こんなに殴られたのだろう?
昨夜、アシスタントは彼女に、荒木雅と村上社長が一緒に歩いているのを自分の目で見たと伝えたはずだ。