部屋の中で、藤崎千明はバスローブを身にまとってベッドに座っていた。
片手で殴られて顔が腫れ上がった村上社長を指さしながら、駆けつけてきた総監督と制作監督に訴えた。
「あなたたちは私を映画に出演させるために誠意を持って招いたと言いましたが、この映画はまだ撮影も始まっていないのに、このスケベ爺さんが私の部屋に入ってきて……」
安藤先生は口角を引きつらせた。明らかに彼自身が進んで来て、すでに決まっていた主役を奪ったというのに?
「私は…私はあなたの部屋に入るつもりじゃなかった」村上社長は顔が腫れていて、言葉もはっきりしなかった。
荒木雅というあの生意気な女が場所を変えようと言って、彼を引っ張ってこの部屋に入れたのだ。彼がどうして部屋の中に藤崎の三の若様がいることを知っていただろうか。