部屋の中で、気まずい沈黙が流れた。
藤崎雪哉は平静な表情で立ち上がり、部屋に戻って服を着替えに行ったが、口元には抑えきれない笑みが浮かんでいた。
工藤みやびは体を起こし、悩ましげにため息をつくと、鳴り出した電話に出た。
「みやび、私とアシスタントは昨夜すでに到着したわ。飛行機に乗り遅れないようにね。私たちが空港まで迎えに行くから」
「わかった、30分後に出発するわ」
工藤みやびは電話を切ると、先ほど無理やりキスされたことで悩む余裕もなく、起き上がって洗面し、着替えた。
朝食のテーブルで、藤崎雪哉に対して不機嫌で一言も話したくなかった。
朝に重要な会議があるため、藤崎雪哉は彼女を地下駐車場まで送っただけで、自ら空港まで送ることはなかった。
「着いたら電話して、何か困ったことがあっても電話するんだ」