朝の七時。
工藤みやびは目覚まし時計で起こされ、藤崎雪哉がすでに出かけていたことに気づいた。
彼女は洗面を済ませ、髪をとかしながらテーブルに置かれたケーキとプレゼントの箱に気づき、開けてみた。
プレゼントはダイヤモンドのイヤリングで、とても精巧で美しく、一目で名工の手によるものだとわかった。
裕福な工藤家で育った彼女は、こういった高級品に慣れており、一目でその価値がわかる目利きになっていた。
彼女はプレゼントを置き、ケーキを少し食べて、残りを部屋の小さな冷蔵庫に入れた。
結局、帝都からはるばる持ってきてくれたものだから、そのまま捨てるわけにはいかなかった。
彼女は出かける前に、藤崎雪哉が残した痕跡をすべて片付け、ドアを出ようとしたとき、ベッドの端に掛けられたバスタオルに気づいた。
額に手を当てて溜息をつき、諦めてバスルームに持っていって洗った。部屋を掃除する人に男性が宿泊した形跡を見られないようにするためだ。
階下で朝食を済ませると、急いでメイクアップチームのところへ向かった。藤崎千明はすでにそこでメイクと衣装合わせをしていた。
メイクアップアーティストが彼女の下地を塗りながら、特に潤いのある赤みを帯びた唇を見て笑いながら言った。
「雅、あなたの唇が...少し腫れてるわね?」
工藤みやびは一瞬気まずくなり、乾いた笑いを数回した。
「昨夜、辛いものを食べ過ぎたの」
傍らにいた藤崎千明はちらりと見て、笑いを堪えながら肩を震わせた。
嘘つけ、明らかに兄とキスしすぎたんだろ。
しかし、二人はあまりにも静かだった。彼と岡崎謙がドアの外でどれだけ長く聞き耳を立てても、何も聞こえなかった。
二人はメイクを終え、一緒に撮影現場へ向かった。
結果、いつもはアクションシーンを一発で決める工藤みやびが、今日は前代未聞の3回もNGを出した。
監督の安藤泰は少し怒り、拡声器を持って容赦なく批判した。
「小倉穂、朝食を食べなかったのか?剣を振るう動きがそんなにふにゃふにゃで、全く力が入っていない...」
工藤みやびは泣きたい気持ちだった。全部あの憎たらしい男のせいだ。
彼のせいで今、手がまだ痛くて、剣を振るうのに全く力が入らなかった。
藤崎千明は小道具の剣で遊びながら、意味深に言った。