この声……どこかで聞いたことがあるような?
丸山みやこは鋭い目で入ってきた人を見つめた。声だけでなく、その姿も見覚えがある。
まるで……どこかで会ったことがあるような。
工藤みやびが話そうとしたとき、自分をじっと見つめる丸山みやこに気づき、眉をひそめた。
前回、丸山みやこは藤崎奥様を連れてしらゆりマンションに押しかけて彼女を捕まえようとした。今日も彼女が来たと知って、正体を確かめに来たのだろう。
丸山みやこ自体は恐れるに足りないが、彼女が自分を荒木雅だと知れば、きっと藤崎奥様に告げ口するだろう。
藤崎奥様は彼女を本当に嫌っているので、彼女と藤崎雪哉が一緒にいると知ったら、きっとあれこれと面倒を起こしてくるに違いない。
今は芸能活動が忙しく上昇期にあるので、余計なトラブルは避けたかった。
藤崎雪哉は少し体を横に向け、「何か用?」と言った。
工藤みやびは会議室の人々を一瞥し、目の奥に狡猾な笑みを浮かべると、甘えた声に変えて言った。
「ダーリン、千晴たちがお茶に誘ってくれたの。ちょっと出かけてもいい?」
水を飲んでいた藤崎千颯は、一口の水を全部吹き出し、全身に鳥肌が立った。
会議中の藤崎グループの幹部たちは驚いて身震いし、信じられない様子で社長を見た。なるほど……社長はこういう調子が好みなのか。
藤崎雪哉は眉を上げ、「ダメだ」と言った。
工藤みやびは足を踏み、「あなたは私と遊んでくれないし、私が出かけるのもダメなんて、ひどいわ」と言った。
藤崎千颯は自分が濡らした書類を振りながら、突然妖怪のように変貌した工藤みやびを歯ぎしりしながら睨みつけた。
彼の刀はどこだ?!
彼の刀はどこだ?!
しかし、彼の実の兄はこの状況に全く動じず、むしろ楽しそうに笑いながら言った。
「あと30分待って、会議が終わったら一緒に食事しよう」
「でも出かけたいの」
工藤みやびは藤崎雪哉を甘えさせることはできなかったが、自分自身が気持ち悪くなるほど鳥肌が立っていた。
「いい子だ、もう少し待って」
藤崎雪哉はそう言いながら、彼女の手を取って隣の空いている椅子に座らせた。
数人の幹部社員は、この「いい子だ」という一言を聞いて、椅子から転げ落ちそうになった。