工藤みやびは恐ろしい顔で彼を見つめた。彼らの部屋は壁一枚隔てただけだったが。
しかし、防音がこんなに悪いはずがない。
藤崎千明は声を低くして、小声で言った。
「変なことを考えないで。昨夜はちょうど藤崎千颯が兄に仕事の報告をしていて、一晩中二人のイチャイチャを見せつけられた上に、私まで起こされて一緒に見せられたんだ」
工藤みやび:「……」
工藤司と同じ便に乗り、しかも同じファーストクラスに座っていたため。
工藤みやびと藤崎千明の二人は、まるで針のむしろに座っているようで、一秒一秒が長く感じられた。
幸い、藤崎千明は彼女と席を交換してくれた。
彼女はそれほど近くに座らなくて済み、カーテンで視界も遮られていたので、ようやく緊張が和らいだ。
西新宿から西居都までのフライト時間は2時間半。