藤崎千明は彼女との通話を終えると、車のキーを持って石橋林人を探しに行き、彼が崩壊して死にたくなっている現場を見物するつもりだった。
「藤崎の次男坊、失恋現場を見に行かない?」
「行くかよ、バカ。こんなに仕事があるのに誰がやるんだ?」藤崎千颯は苦々しく階段を上がった。
兄貴は仕事を山ほど放り出して恋愛に走り、弟は外で遊び回るばかり。この家のために身を粉にして働いているのは自分一人だけだ。
藤崎千明はそれを聞くと、自分で鼻歌を歌いながら出かけ、車で直接千秋芸能株式会社へ向かった。
石橋林人のオフィスに入ると、彼がティッシュボックスを抱えてソファに座り、鼻水と涙でぐしゃぐしゃになっているのが見えた。
「おや、そんなに悲しいのかい?」
藤崎千明は彼の向かいに座り、顔には隠しきれない他人の不幸を喜ぶ表情を浮かべていた。