十一時半、工藤みやびは藤崎雪哉が手配したプライベートジェットに乗り、ようやく帝都に戻ってきた。
時間を見ると残り30分しかなく、仕方なく溜息をついた。
やはり、間に合わないだろう。
しかし、飛行機を降りるとすぐに、グレーのコートを着た長身で優雅な男性が外で待っているのが見えた。
工藤みやびは嬉しそうに彼の前まで走り、明るい瞳に笑みを浮かべた。
「お誕生日おめでとう!」
藤崎雪哉は手を伸ばして彼女を抱き寄せ、「先に車に乗ろう」と言った。
飛行機のスタッフが、彼女が持ってきた荷物を下ろし、車に積み込んだ。
工藤みやびは彼について車に乗り、近くにある天水ヴィラへ向かった。
中に入ると、風船や色とりどりのリボンで派手に飾られたパーティー会場が広がっていた。
藤崎雪哉は招かれざる三人を一瞥し、不機嫌そうに眉をひそめた。
「暇なのか?」
「お義姉さんが呼んだんだよ」三人は揃って彼の隣にいる工藤みやびを指さした。
予想通り、彼らは嫌な顔をされた。
工藤みやびは笑いながら、確かに…自分が呼んだようなものだと思った。
「まずはケーキを食べましょう。昨夜ホテルで急いで作ったの」
藤崎千颯はそれを聞くと、すぐに近寄って受け取った。
「開けるよ」
認めざるを得ないが、義姉のスイーツは、家のフランス人パティシエよりも素晴らしかった。
ただ、食べる機会はあまりない。
一年に、おそらくこの機会だけが少し味わえるチャンスだった。
ケーキはすぐにテーブルに置かれ、ろうそくが立てられた。
「十二時はもう過ぎたけど、歌は歌わないとね」
藤崎千明はリビングの電気を消し、誕生日の歌を歌い始めた。
藤崎雪哉は三人の邪魔者を自動的に無視し、視線は常に笑顔の少女に注がれていた。少女の優しい声が一つ一つ彼の心に響いていた。
彼はすでに28回の誕生日を過ごしてきたが、今年が最も嬉しかった。
ろうそくを吹き消し、ケーキを切ったが、食べる前に池田輝と藤崎千明が宝物のように自分たちの心を込めたプレゼントを差し出した。
池田輝が用意したのは昆虫の標本で、取り出した途端、藤崎千颯と藤崎千明に一斉に文句を言われた。
藤崎千颯:「人にプレゼントするなら、もう少し考えろよ。去年も兄さんに魚の化石を贈ったじゃないか」