工藤みやびはそれを聞くと、緊張して周りを見回した。
「あなた、正気?こんな時に彼を連れ出すなんて?」
「あなたの話をしたら、どうしてもあなたに会いたいって騒ぎ出して、連れてこないと絶食すると言うの」本間夢は無奈に肩をすくめた。
工藤みやびは時間を確認し、「場所は遠い?」
「すぐ近くよ、数分で着くわ」
本間夢は彼女をバーの裏口から連れ出し、小さな路地を少し歩いて、ある太陽保育園に着いた。
工藤みやびは窓の外に立ち、おもちゃ部屋にいる小さな子供たちの群れを見つめたが、しばらく見ても福くんの姿は見つからなかった。
「月先生!」本間夢は教室内の幼稚園の先生に手を振った。
若い先生は子供たちをなだめてから、ドアのところまで来て恥ずかしそうに尋ねた。
「丸山さん、いらっしゃいましたね」
本間夢は途中で買った果物を渡し、「あなたに。福くんは今日おりこうにしてる?」
若い女性教師はそれを受け取り、顔を真っ赤にして、明らかに本間夢を男性として見ていた。
「福くんはとても良い子ですよ。今、お迎えですか?」
「いいえ、友達が来たので、ちょっと会わせたいだけです」本間夢は言い終わると、教室内の子供たちに向かって呼びかけた。「福くん!」
工藤みやびは眉をひそめながら教室内の子供たちを見ていると、小さな二つ結びにピンクのヘアピンをつけた三歳の子供が声を聞いて走ってきた。
その瞬間、彼女は呆然とした。
どうして福くんを見つけられなかったのか分かった。彼女は教室内の男の子たちにしか注目していなかったのだ。
この変わった母親が自分を男装しているだけでなく、息子まで女の子に仕立て上げているとは思いもしなかった。
福くんは走ってきて本間夢をしばらく見つめ、困った顔で一言。
「パパ!」
本間夢は女の子に仮装した息子を抱き上げ、幼稚園の先生に言った。
「近くで少し話すから、月先生はお忙しいでしょうから」
幼稚園の先生は彼らが遠ざかるのを見送ってから、教室に戻って子供たちの世話を続けた。
福くんはぱっつん前髪で、小さな二つ結びをしており、目はくりくりと丸く、まつげは長かった。
もし工藤みやびが福くんが男の子だと知らなければ、本当に女の子だと思ってしまうところだった。
福くんはずっと彼女を見つめ、そして怒った顔で本間夢を睨みつけた。