第400章 お義姉さんと呼んでみなさい

「お前は……」

藤崎千颯は言葉に詰まった。彼の兄は色恋に弱いタイプだから、弟を取り替えるよりも、むしろ嫁を取り替える可能性の方が高いだろう。

「ふん、普段は兄さんが虐めるって文句言ってたくせに、今は急に兄弟愛が深まったの？」工藤みやびは、兄のために憤慨している藤崎千颯を面白そうに見つめた。

藤崎千颯はソファに腰を下ろし、厳しく警告した。

「兄さんを裏切るようなことをしたら、たとえ兄さんに殺されても、俺はお前を許さない」

兄は頭がいいけど、恋愛経験が少ないんだ。騙されないでくれよ。

兄は確かに彼らを厳しく扱うが、守るべき時はためらわずに守ってくれる。

藤崎の三の若様は兄に一番嫌われているが、彼が海外留学中にテロに遭って銃撃を受けた時、状況がどれほど緊迫していても、兄は彼を迎えに行っただけでなく、テロを起こした一味を全員片付けてしまった。

「もういいよ、本当に兄さんが恋をしたからって馬鹿になったと思ってるの？」工藤みやびは彼を睨みつけ、鼻を鳴らした。「もし私が本当に浮気したら、今ここであなたと話せるわけないでしょ？」

「昨夜、兄さんに何を言ったんだ？」藤崎千颯は追及した。

工藤みやびはしばらく考えてから言った。

「彼のことが好きだって言ったわ」

「それだけ？」藤崎千颯は信じられないという顔をした。

それだけで、兄さんは何も問い詰めなかったのか？！

工藤みやびは頷き、書斎に上がろうと身を翻した。

「待て！」藤崎千颯は立ち上がり、二、三歩追いかけて、再び警告した。「荒木雅、お前は……」

「もう一度脅したら、兄さんに言いつけるわよ！」工藤みやびは振り返って反撃した。

「お前は……」藤崎千颯は罵りたくても罵れず、悔しさを噛み締めた。

工藤みやびは彼のもどかしそうな様子を見て、意地悪く笑った。

「お義姉さんって呼んでみて、そうしたら兄さんには言わないわ」

「まだ正式に嫁に来てもいないのに、なぜお義姉さんと呼ばなきゃならないんだ？」藤崎千颯は顔を背け、鼻を鳴らした。

「じゃあ、兄さんに言いに行くわ。あなたが別のお義姉さんが欲しいって」工藤みやびはいたずら心が湧いてきた。

藤崎千颯は彼女が階段を上がって告げ口しようとするのを見て、しぶしぶ渋い顔で、心ならずも一言。

「お義姉さん！」

「いい子ね～」