藤崎雪哉の甘い言葉のせいで、工藤みやびは番組の収録に遅れそうになった。
幸い、元々肌の調子が良かったので、急いで行って少しメイクをしただけで番組の収録が始まった。
しかし、司會者に何度か質問されても、彼女は上の空だった。
なぜなら、頭の中は藤崎雪哉の顔でいっぱいで、耳元には彼の声が響いていたからだ。
幸い、司會者は経験豊富で、完璧にフォローしてくれたため、番組の収録に影響はなかった。
番組の収録が終わり、空港に向かう途中、石橋林人は彼女を指さしながら歯ぎしりして溜息をついた。
「社長と一ヶ月も会ってないのはわかるけど、仕事はまだ終わってないんだから、帰ったらもう少し気をつけてよ」
アシスタントは先に空港に行っていたので、車の中は二人だけ。工藤みやびは遠慮なく話した。
「美しさには抗えないものよ」
車を発進させたばかりの石橋林人は急ブレーキをかけ、目を閉じて休んでいる彼女を振り向いて睨みつけた。
「あなた、若いくせに、下ネタを言うときってどうしてそんなに恐ろしいの?」
「運転して、飛行機に乗り遅れるわよ」工藤みやびは急かした。
彼女は今19歳の姿だが、魂はすでに20代半ばだった。
本間夢というスケベな女のおかげで、影響を受けて彼女もそれほど純粋ではなくなっていた。
そういえば、もう一ヶ月以上経って、師匠の怪我もだいぶ良くなっているはずだ。
最近、彼らと連絡を取る方法を考えなければならない。
石橋林人は運転しながら、明日の予定について彼女に説明していた。
工藤みやびは上の空で聞きながら、頭の中は藤崎雪哉のことでいっぱいだった。
美しさに惑わされるというのは本当だ。荒木雅になったばかりの頃は、堀夏縁への復讐と、自分を暗殺しようとした犯人を突き止めることだけを考えていた。
くそ、今は藤崎雪哉と恋愛して結婚して子供を産むことしか考えていない。
二人は空港に着き、搭乗手続きを済ませ、番組収録の街に飛んだのはすでに夜だった。
工藤みやびはホテルに戻ると、まず藤崎雪哉に電話をして無事を報告した。
彼との通話を終えてから、一ヶ月間電源を切っていた携帯電話の電源を入れ、本間夢からのメッセージがないか確認した。
携帯には、たった一つのメッセージがあった。
[みやび、見たらこの電話に連絡して。]