第442章 藤崎雪哉、また私を誘惑する

藤崎雪哉は身をかわして飛んできた枕を避け、薄い唇に楽しげな笑みを浮かべた。

そして、立ち上がってベッドの側に歩み寄り言った。

「起きて何か食べよう。送っていくから」

工藤みやびはベッドの脇にあったナイトガウンを羽織り、痛む腰を抑えながらベッドから降り、洗面所へ向かって服を着替えた。

浴室に入るとすぐに、昨夜の恥ずかしい光景が脳裏によみがえり、直視できずに目を閉じたまま急いで歯を磨いた。

藤崎雪哉は彼女の後ろに立ち、鏡に映る彼女の姿を見て思わず笑い声を漏らした。

彼を誘惑するときは大胆なのに、終わった後は恥ずかしがって後悔する。

工藤みやびは歯磨きを終え、目を開けて鏡越しに後ろに立って笑っている彼を見て、振り向いて睨みつけた。

「何笑ってるの?」

藤崎雪哉は楽しげに口元を上げた。「彼女があまりにも可愛いから」

工藤みやびは口を拭き、出て時間を確認すると、急いで服を着替えて食事をするために階下へ降りた。

藤崎雪哉は彼女がまだ元気がなさそうな様子を見て、キッチンにコーヒーを入れるよう頼み、持ってきてもらった。

「午後何時に終わる?」

工藤みやびはコーヒーを一口飲んで、「番組の収録が終わったら、そのまま空港に向かうわ」

最近は仕事のスケジュールがかなり詰まっていて、彼女はほとんど休む時間がなかった。

藤崎雪哉は仕方なく溜息をついた。「千秋芸能は映画を製作する予定だから、新しいドラマは引き受けないんじゃないのか?」

もし彼らが自分たちで映画を撮るなら、時間的にも余裕ができるし、彼女もこんなに全国を飛び回って姿を見せないということもなくなるだろう。

「すでに脚本家に創作を依頼してるわ。忙しいのが一段落したら脚本を見て、それから正式に準備を始めるつもり」と工藤みやびは言った。

堀夏縁の『命果てぬ夢2』はすでに準備が進んでいるので、彼女もこれ以上遅らせるわけにはいかなかった。

他の監督の才能は否定できないが、撮影する内容や手法は、結局彼女自身が思い描くものとは違っていた。

『命果てぬ夢』を超えるには、彼女自身が撮る映画でなければならない。

彼女は一つの伝説を作り出すことができたのだから、それを超える新たな伝説も必ず作り出さなければならない。

「藤崎家の投資は必要ない?」と藤崎雪哉は尋ねた。