警察官と後から来た医師は顔を見合わせ、医師は重々しい表情で言った。
「彼女は爆発と火災の現場にいたため、今の状態は……」
藤崎雪哉は冷たい声で繰り返した。「開けろ!」
藤崎千明は医師の言葉を聞いて、開けたら目を覆いたくなるような光景が待っていることを想像できた。
「兄さん、見ない方が……」
自分でさえ見るのが辛いのに、兄にとってはどれほど胸が張り裂けるような思いになるだろうか。
藤崎雪哉はなおも主張した。「開けろ」
医師はため息をつき、近づいてファスナーを開け、中の被害者の姿を露わにした。
そして、黙って脇に退いた。
藤崎千明は一目見ただけで、もう見るに耐えず顔を背け、瞬く間に目が赤くなった。
中にいたのは、昨日まで彼と一緒に作家と会う約束をしていた生き生きとした荒木雅ではなく、爆発による火傷で顔と半身が人間の形をとどめていなかった。
しかし、身長や体型から見ると、確かに荒木雅によく似ていた。
「本当に…彼女だと確認できているのか?」
警察官は藤崎雪哉を見て、それから藤崎千明を見た。
「彼女の身体から見つかったものについて、石橋さんが彼女の遺品だと確認しています」
「そして、石橋さんから提供された被害者の情報とDNA照合の結果、彼女は…確かに荒木雅様です」
……
藤崎千明は声を出さない実の兄を見た。彼はまだそこに立ち、遺体袋の中の面影もない被害者を見つめていた。
怒りに燃えることも、悲しみに打ちひしがれることもなく。
しかし、その目の奥は死んだように灰色で、まるで命の光をすべて失い、ただの抜け殻だけが目の前に残されているようだった。
荒木雅に出会う前も、人や物事に対して冷淡ではあったが、今のように氷のように冷たく、一切の温もりが感じられない様子ではなかった。
彼は手を伸ばして兄を引っ張り、詰まった声で呼びかけた。
「……兄さん」
藤崎雪哉は数分間沈黙した後、言った。
「池田輝を呼んで、DNAの再照合をさせろ」
彼は信じられなかった。昨日、無事に空港まで送った人が、たった一日で目の前でこんな姿になっているなんて。
藤崎千明はため息をついた。兄はまだ、これが荒木雅だとは信じられないようだった。
彼はこれ以上説得しようとも、説得する勇気もなかった。