やっとのことで、工藤みやびは福くんに寝る前の物語を読み終え、ようやく彼を寝かしつけることができた。
書斎にはまだ機嫌を取る必要のある彼氏がいることを思うと、疲れた溜息をついた。
彼女は福くんの布団をきちんとかけ、そっと静かに寝室を出て、階下に行って残しておいたお粥を器によそい、それを持って書斎へ向かった。
「夕食はあまり食べなかったでしょう、特別に残しておいたの」
藤崎雪哉はちらりと見ただけで、仕事に集中し続けた。
怒りで満腹だから、食べない。
「怒ってるの?」
「いいや」
藤崎雪哉は書類をめくりながら、口では怒っていないと言いつつも、顔中に「私は怒っている」と書かれていた。
工藤みやびは呆れつつも可笑しく思った。もうすぐ30歳になる人が、3歳の子供に嫉妬して怒るなんて。