やっとのことで、工藤みやびは福くんに寝る前の物語を読み終え、ようやく彼を寝かしつけることができた。
書斎にはまだ機嫌を取る必要のある彼氏がいることを思うと、疲れた溜息をついた。
彼女は福くんの布団をきちんとかけ、そっと静かに寝室を出て、階下に行って残しておいたお粥を器によそい、それを持って書斎へ向かった。
「夕食はあまり食べなかったでしょう、特別に残しておいたの」
藤崎雪哉はちらりと見ただけで、仕事に集中し続けた。
怒りで満腹だから、食べない。
「怒ってるの?」
「いいや」
藤崎雪哉は書類をめくりながら、口では怒っていないと言いつつも、顔中に「私は怒っている」と書かれていた。
工藤みやびは呆れつつも可笑しく思った。もうすぐ30歳になる人が、3歳の子供に嫉妬して怒るなんて。
彼女は彼の椅子の後ろに回り込み、彼の首に腕を回して抱きしめ、彼の頬にすり寄せた。
「本当に怒ってないの?」
藤崎雪哉は横目で彼女を見て、「母が連れてくるように言ったのか?」
まだ結婚もしていないのに、もう色々な方法で子供を作るよう催促している。
工藤みやびは彼の肩に顎を乗せ、もごもごと尋ねた。
「これは私たちに親になる感覚を事前に体験させたいだけじゃない?今こんなに福くんを嫌がってるけど、将来私たちの子供も可愛がらないつもり?」
「家族の考えを気にする必要はない。結婚して子供を作るのは私たちの問題だ」と藤崎雪哉は言った。
彼は家族が子供を急かすからといって、急いで子供を作りたくはなかった。
以前は考えもしなかったが、最近になるほど思うようになった。子供は彼らの関係に大きな影響を与えすぎる。
彼はむしろ今のように、彼女の目にも心にも自分だけがいる状態を望んでいた。
もし小さな存在が増えたら、その時彼女の目と心の中で大事なのは子供なのか彼なのか、誰にもわからない。
「藤崎おじさん、子供がいてもいなくても、私が一番好きなのはあなたでしょ?」
この言葉に、一時間以上不機嫌だった藤崎雪哉の気分は少し良くなった。
「今日は彼がここにいてもいいが、明日は必ず送り返す」
「でも、お義母さんは二日間見てほしいって言ったのよ?」工藤みやびは取り入るように笑いながら尋ねた。「もう一日だけ、いい?」
「ダメだ」