第498章 藤崎雪哉の地位が急落

藤崎雪哉は眉をひそめ、駆け寄ってきて「奥さん」と呼ぶ福くんを見つめた。

会ったことはなかったが、彼らが連れてきたということは、本間壮佑が一時的に預けている子供だと想像できた。

藤崎千颯が近づき、福くんが背負っているクマのリュックを軽く引っ張った。

「福くん、これはあなたの奥さんじゃないよ。変なこと言わないで」

こんな風に呼ばれたら、兄さんは機嫌が悪くなるだろう。

福くんは足にしがみついてさらに強く抱きついた。「でも僕の奥さんだもん!」

工藤みやびは横で顔色が暗くなっている藤崎雪哉を一瞥し、かがんで福くんに小声で言った。

「福くん、お姉さんって呼んでね!」

福くんは顔を上げて彼女を見た。「でも、福くんのお嫁さんになってくれるって約束したじゃん」

藤崎雪哉はそれを聞いて眉をひそめ、彼女に尋ねた。

「いつ約束したんだ?」

工藤みやびは頭を抱えた。前回、福くんが泣きそうになったとき、なだめるためについ約束してしまったのだ。

すぐに忘れると思っていたのに、まさか彼がずっと覚えているとは。

でも、こんな小さな子供なのに、子供の無邪気な言葉に対して、なぜ彼は顔を曇らせるのだろう?

福くんは怖そうな藤崎雪哉をちらりと見ると、瞬時に涙があふれ出した。

工藤みやびは急いで福くんを抱き上げ、雪哉を睨みつけた。

「何してるの?彼を怖がらせたじゃない」

福くんは彼女の首に抱きつき、すすり泣きながら藤崎雪哉を見て、泣きたいけど怖くて泣けない様子だった。

この数日間、おばあさん気分を満喫していた藤崎奥様はその様子を見て近づき、藤崎雪哉を叱りつけた。

「いい大人なのに、3歳の子供と何を争っているの?怖がらせたらどうするの?」

「……」

藤崎雪哉は眉をひそめ、午後までは優しくて可愛かった彼女が一変したことに信じられない様子で見つめた。

それに、母親は何を言っているのだろう?自分は何も悪いことをしていないのに。

藤崎奥様は工藤みやびの隣に立ち、手を伸ばして福くんの背中をさすった。

「福くん、怖がらなくていいよ。あのおじさんはもう怒らないからね」

藤崎奥様だけでなく、藤崎正男も来て慰め、さらに藤崎お婆様も集まって、藤崎雪哉に怖がらされて泣きそうになっている福くんをなだめた。