工藤みやびは元々会社で会議を開くだけのつもりで、その後すぐに帰るつもりだった。
急に呼び出されたので、マスクも持っておらず、車には帽子が一つあるだけだった。
「丸山さん」
丸山みやこは内心歯ぎしりした。以前MGのバッグのせいで、パーティーで面目を失ったのだ。
しかも、MGから多額の賠償金を請求された。
今や、彼女はこのブランドのグローバルアンバサダーになっていた。
さっきショッピングモールで彼女の広告を見ただけでも腹が立ったのに、今や本人まで目の前に現れた。
しかし、周りに人がいるため、笑顔を作って挨拶せざるを得なかった。
「大スターはそんなに暇で、ショッピングにまで来るの?」
彼女が藤崎家から追い出されて、貧しい生活を送っていると思っていたのに、逆に芸能界に入って順風満帆な生活を送っているとは。
工藤みやびは軽く微笑んで、「人を迎えに来ただけ」と言った。
彼女が最近支社に異動になって、もう藤崎雪哉に近づく機会がないと知っていなければ、こんな良い顔はしなかっただろう。
丸山みやこは髪をかき上げて、「あら、私は藤崎おばさんと上の階でお茶する約束なの。一緒にどう?」
工藤みやびは携帯を見た。藤崎奥様から送られてきた位置情報だ。
「結構です」
藤崎奥様は何のつもりだろう。彼女を呼び出しておきながら、丸山みやことお茶の約束をしている。
「久しぶりだし、せっかくだから一緒に会わない?」丸山みやこは誠意あるように誘った。
「いいえ、結構です」工藤みやびは微笑みながら断り、エレベーターのドアが開くとすぐに出て行った。
この階は子供服や用品を売るフロアだった。彼女は藤崎奥様から送られた位置情報に従って、すぐに子供服店で藤崎奥様と藤崎正男、そして彼らが連れてきた福くんを見つけた。
二人は福くんのためにたくさんのおもちゃや用品を買っていて、今、藤崎奥様は子供服の山の中から彼に服を選んでいた。
「みやび、ちょうど良かったわ。この中でどれが良いと思う?」
工藤みやびはちらりと見て、二着を指さした。
「この二着がいいんじゃないでしょうか。クマのデザインがついてますし、福くんはクマが大好きですから」
藤崎奥様はうなずき、店員に向かって言った。
「この二着と、あの二足の靴も包んでください」