第617章 藤崎雪哉の妥協

主寝室で、二人の小さな言い争いが雰囲気を緊張させていた。

藤崎雪哉は彼女について部屋を出て、荷物をまとめていた彼女の手を引いた。

「行くぞ、病院へ」

工藤みやびは彼の手を振り払い、不機嫌そうに言った。

「もう十数個の妊娠検査薬で調べたけど、一つも陽性じゃなかったわ。病院に行って何するの？」

「検査が必要だ」

藤崎雪哉は彼女を連れて階下へ降り、自ら車を運転して池田輝がいる病院へ連れて行った。

池田輝はすでに藤崎千颯から彼らが来ることを知らされていたので、早めに下りてきて出迎えた。

そして、気を利かせて直接彼らを事前に手配しておいた産婦人科の検査室へ案内した。

検査の結果は、もちろん妊娠していなかった。

池田輝は少し信じられない様子で、検査した女医に言った。

「もっと詳しく調べてください。本当に妊娠していないんですか？」