第592章 工藤司が愛しているのは、工藤みやびから移植された彼女の心臓

嘘発見器の検査の翌日、堀夏縁は家の盗聴器が消えていることに気づいた。

そして、彼らの家や病院の周りをうろついていた人々も撤退していた。

母娘二人はまだ不安で、一緒に家中を再度チェックし、すべての盗聴器が本当になくなったことを確認してようやく安心した。

鈴木香は疲れ果てソファに座り込んだ。「機器も撤去され、人も引き上げた。彼らはもう私たちを疑うことはないでしょう」

これらの人々が堀家を調査しに来て以来、彼女はまともに一晩眠れていなかった。

「それでも、私たちはまだ注意する必要があるわ」と堀夏縁は言った。

昨日の嘘発見器の検査で、彼らは工藤みやびが死んで心臓を彼女に移植することを望んでいたのかと尋ねてきた。明らかに彼女たちを疑っており、その疑いは深かった。

今日になってすべてを撤去したが、本当に嘘発見器の検査だけで彼らへの疑いを晴らしたのだろうか？

「うん、注意しないとね」鈴木香は痛む太陽穴をさすりながらため息をついた。

あの人たち、一人一人が恐ろしい顔つきで、見ているだけで心が震えた。

「お母さん、あの薬のこと、本当に他の誰も知らないの？」堀夏縁は不安そうに尋ねた。

鈴木香はため息をつき、言った。

「あなたに薬をくれた看護師さんも、もう亡くなったでしょう？」

今このことを知っているのは、母娘二人だけ。

彼女たち自身が口を固く閉ざしていれば、このことは他の誰にも知られることはない。

堀夏縁はうなずき、緊張していた心の糸が少し緩んだ。

「特に問題がなければ、明日には撮影のために撮影現場に戻るわ。映画は映画祭で初公開されるから、撮影スケジュールはとても厳しいの」

「仕事ばかりに気を取られないで、工藤司ともっと連絡を取って、早く結婚の話を決めなさい」と鈴木香は注意した。

最近、二人の関係が冷え込んでいる。このままでは、結婚話も立ち消えになりかねない。

「以前工藤家に来た荒木雅が、工藤みやびにそっくりだったから、今では彼はまるで魔法にかかったように、あの女性のことばかり気にしているの」

堀夏縁は最近になって、工藤司が以前オーストラリアに行ったのは仕事のためではなく、荒木雅と一緒に行ったことを知った。

あの数日間、彼女が彼に電話をかけると、彼は彼女と一緒にいる時間がないと言った。