藤崎雪哉は石橋林人が荷物を部屋の中まで運ぶのを断り、自分で受け取って室内に置いた。
「彼女はこちらでの仕事を終えたのか?」
石橋林人は二秒ほど呆然とした。そのことを彼女に聞かないで、俺に聞くのか?
しかし、心の中でツッコミを入れたくても、表面上は笑顔を浮かべて答えるしかなかった。
「もう終わりました。元々の予定でもこの数日のうちに帰国する予定でした」
藤崎雪哉:「彼女は私と一緒に帰る。君は気にしなくていい」
そう言って、ドアを閉めた。
石橋林人はドアを見つめながら口をとがらせた。彼はそもそも気にするつもりなんてなかったのに。
あの二人が会えば、いつも犬の散歩をさせられるような気分になる。彼らがイチャイチャするところなんて見たくもない。
藤崎雪哉が彼女のスーツケースを寝室に運ぶと、工藤みやびはすでに眠っていた。