第620章 結婚のこと、後悔したのか？

「じゃあ、良い知らせを待ってるわね」西村千晴は心から笑った。

荒木家で起きたことを知って以来、藤崎雪哉が彼女を非常に大切にしている様子を見て、彼女は二人が結婚して最後まで一緒になることを強く願っていた。

彼女自身も鈴木紀子も、家族の愛情に包まれて育ったが、荒木雅はこんなに早くから本当に彼女を愛してくれる肉親を失ってしまった。

もし藤崎雪哉が彼女に本当の家庭を与えることができるなら、友人として彼女と鈴木紀子は心の底から彼女のために喜びたいと思っていた。

「わかったわ」工藤みやびは笑いながら、時計を見て言った。「もう遅いから、送っていくわ」

西村千晴は断らなかったが、二人が車を取りに階下に降りたところで、藤崎雪哉の車が来るのを見た。

藤崎雪哉は窓を下げ、彼女を見て言った。

「乗りなさい」

工藤みやびは彼を見て、車に近づいて言った。

「でも、千晴を送ると約束したの」

「藤崎千明に送らせろ」と藤崎雪哉は言った。

工藤みやびは藤崎千明に電話をかけたが、彼は伊藤冬芽とデートしていて時間がないと言った。

彼女は仕方なく自分のマネージャーに電話をかけたが、石橋林人はポストプロダクションチームのところで今は抜けられないとのことだった。

「あの...ついでに彼女を送っていくことはできない？」

藤崎雪哉は軽く頷いた。「ああ」

工藤みやびはようやく西村千晴を呼んで車に乗せた。西村千晴は助手席に座り、彼女と藤崎雪哉は後部座席に座った。

車に乗るなり、西村千晴は藤崎雪哉が彼女の手を握っているのを見て、こっそり微笑んだ。

なるほど、二人の関係は本当に良好なようだ。

「千晴とお父さんは『微睡の淵』の映画の音楽を作っていて、ちょうど久しぶりに会ったから、少し長く話してしまったの。わざわざ迎えに来なくても良かったのに」と工藤みやびは車に乗って言った。

藤崎雪哉：「ついでだ」

工藤みやびは笑って言った。「藤崎本社と千秋芸能株式会社は反対方向にあるのに、随分と都合のいい『ついで』ね」

西村千晴はそれを聞いて、笑いながら言った。

「藤崎さんの言いたいことは、あなたを迎えに行くなら、どこでも『ついで』になるってことよ」

思いがけないことに、付き合って半年以上経っても、藤崎雪哉は彼女に対する優しさと愛情が変わらなかった。