第660章 竹内家の鶏犬も安らかならず

竹内薫乃はもちろん、自分のスター街道をこのまま諦めるわけにはいかなかった。

だから、契約解除書にはきっぱりと署名しなかった。

「覚えておきなさい、あなたたちは後悔することになるわ」

そう言い残し、バッグを手に怒り狂って会社を後にした。

会議室では、タレントマネージャーが他の幹部たちを見回した。

「彼女が小沢家を頼って、裁判沙汰になったら我々は大丈夫なのか？」

竹内薫乃の婚約者である小沢子遠は、結局のところ帝都の名家の出身だ。この時期に彼女との契約を解除して訴訟になれば、小沢家が介入してきた場合。

「彼女がこんな騒ぎを起こした以上、小沢家の門をくぐれるかどうかも怪しいものだ」一人が冷ややかに言った。

以前、彼らは彼女と荒木雅の間の恨みについて尋ねたが、彼女はただ荒木雅が両親の再婚を受け入れられずに家出したと言うだけだった。

今日になって明らかになったのは、彼女たちが荒木雅を追い出して行き場をなくしたということだった。

今や荒木雅は強く励ましを与える人物として名を馳せ、一方の竹内薫乃は世間から唾棄される対象となるだろう。

「事態がここまで来ると、荒木雅は必ず訴訟を起こして荒木家の財産を取り戻すだろう。そうなれば竹内家は何も残らない。小沢家の家長はもともとこの孫嫁を気に入っていなかったのだから、そうなったら彼女を家に入れるだろうか？」別の一人が続けた。

しかしタレントマネージャーは言った。「小沢若旦那はずっと竹内薫乃に熱心だった。彼女を守り続ける可能性は否定できない」

「小沢家がどれだけ彼女を守ろうとしても、彼女のために藤崎の三の若様と敵対するだろうか？」先に発言した人物が注意を促した。

千秋芸能は藤崎の三の若様の会社であり、この映画は彼らの会社が投資したものだ。

そして藤崎の三の若様の背後には、日本で誰も敵に回したくない藤崎家の長男、藤崎雪哉がいる。

小沢子遠が頭がおかしくなったとしても、竹内薫乃一人のために、今の荒木雅と対立するようなことはしないだろう。

竹内薫乃と竹内家がしてきたことすべてのために、今や番組の生放送を見た人々は皆、自発的に荒木雅を支持している。

この状況で、誰が彼女に敵対すれば、それは彼ら全員に敵対することになる。

竹内薫乃は会社を出るとすぐに、妹の竹内彩からの電話を受けた。