竹内家成が戻ってきたが、家には入らなかった。
車を家の近くに停め、警察が家に来て中山美琴を連行していくのを見ていた彼は、車の中でタバコを吸い、夜になってようやく家に戻った。
竹内薫乃は彼が帰ってくるのを見るなり、怒りに燃えて問いただした。
「お父さん、どうして、どうしてお母さんを売り渡したの?」
「何を売り渡すって?」竹内家成は知らないふりをした。
「あのことを知っているのは私たち家族だけで、今日一日中帰ってこなかったのはお父さんだけ。密告したのはお父さん以外に誰がいるの?」竹内薫乃は追及した。
彼女はキャリアを失い、家族が荒木雅との訴訟に直面することが最悪の状況だと思っていた。
しかし、もっと残酷なのは両親が敵対し、この家が完全に崩壊することだった。
竹内家成は隠し通せないと悟り、思い切って否定するのをやめた。
「お前に何がわかる、私はこの家のためにやったんだ」
会社がなくなれば、家族はこれからどうやって生きていくのか?
「この家のために、お母さんを犠牲にするの?」竹内薫乃は涙を流しながら尋ねた。
竹内家成はイライラしながらため息をつき、座って言った。
「もう弁護士を雇ってお母さんの弁護をしてもらうことにした。間接的な故意殺人罪でも最高で10年だ。行いが良ければ10年経たずに出てこられる」
「10年?人生にいくつの10年があるっていうの?あなたには良心がないの?」
竹内薫乃は歯ぎしりした。以前は家族が再会し、この父親を公に認められることを願っていた。
今では、彼女は本当にこんな父親など最初からいなかったほうがよかったと思った。
「会社を守らなければ、私たちは何も残らない」竹内家成は叫んだ。
「会社を守る?」竹内薫乃は嘲笑い、冷ややかに言った。「お母さんを売り渡せば、荒木雅が会社をあなたに残すと思ってるの?彼女は私たちの家が崩壊するのを望んでいるのに、まだ会社をあなたに残すと思う?」
「私は彼女の実の父親だ!」竹内家成は断固として言った。
もし中山美琴が現れなければ、彼はおそらく荒木遥香と穏やかに一生を過ごしていただろう。荒木遥香はビジネス界の駆け引きが嫌いだったから、結局会社を管理するのは彼だったはずだ。