神崎弥香は眉を少し上げたが、彼に返事をせず、タクシーを拾って出かけた。
彼女はまず草刈菓子店に行き、神崎山雄の好きなお菓子を買い、包んでもらった後、鈴村屋へ行ってお茶を買った。
鈴村屋は神崎家の実家に帰る途中にあり、彼女は神崎翔とそこで待ち合わせる約束をしていた。鈴村屋はお客さんが多く、神崎弥香は列に並んでいたため少し時間がかかった。
彼女が鈴村屋を出ると、神崎翔の車が道端に停まっているのが見えた。
いつもは彼女が神崎翔を待っていたのに、神崎翔が彼女を待つのは珍しかった。以前なら感動したかもしれないが、今は彼女の心には何の波風も立たなかった。
彼女は荷物を持ったまま、直接後部座席のドアを開けて座った。
運転席に座っていた神崎翔は冷たく彼女を見て言った。「どういうつもり?俺を運転手扱いか?」